福島市唯一の地酒を残したい~みんゆう随想7月掲載分より

福島民友新聞「みんゆう随想」7月掲載分より転載いたします。

(転載元 : 福島民友新聞「みんゆう随想」)

 

「福島の酒が日本一」という話が二回続き、自己紹介が遅くなりました。

改めましてこんにちは。福島市唯一の造り酒屋「金水晶酒造店」の斎藤美幸と申します。社長である父が高齢になり、ほかに兄弟のいない一人娘であるため「私が継がないと実家の酒屋が無くなってしまう」と思い一昨年の春、東京から戻りました。

それまで家業を継がなかった理由は、造り酒屋の将来に希望を持てなかったからです。日本酒の生産量は、最盛期の3分の1に落ちこみ、福島県酒造組合加盟社数も昭和33年に155だったものが現在は63。洋酒や焼酎、そして大量生産で安価な日本酒との競争にさらされる中「こんな小さな造り酒屋を継いだら将来ご飯が食べられなくなってしまう」と本気で思っていました。

それでも継ごうと思ったのは「おいしい」に加えて「福島市で一軒だけの造り酒屋になってしまった」ことに気づいたからです。

実は当店では、「金水晶」の自社ブランドの他、地域のプライベートブランドとして、川俣町の「古寿琴(コスキン)」月舘町の「小手姫」伊達市霊山町の「みちのく霊山」二本松市東和町の「木幡山」という日本酒を造らせていただいています。ほかにも地元に造り酒屋のない地域の皆様が、縁のある酒造会社に醸造を委託している例は多くあります。

年末近い、激しく雪の降る日のことでした。霊山町の皆様が厳寒の中、町の「湧水の里」から水をタンクで運んでいらっしゃいました。その姿を見て私は「みんな自分の地域の地酒が欲しいのだ」と突然思い至りました。地元に酒屋のない方がこれだけがんばっているのに、私は自分の生活不安から地元の酒を無くしても良いのだろうか。「金水晶は御神酒(おみき)から始まった」とも聞いているのに、地元の神社や祭りに地酒が無くて良いのか。

「それでもよい」と思う人はいるでしょう。しかし私は嫌だと思いました。自分で悲しいと思いました。そういうわけで私は誰に頼まれた訳でもなく自分で造り酒屋を継ぐことを決めました。

幸い福島の酒には「おいしい」という利点があります。当店も先日の全国新酒鑑評会「大吟醸の部」で金賞をいただき、この十年で金賞九回、入賞一回の十年連続受賞となりました。

日本酒の将来に希望がもてそうな気がします。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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